許可申請手続

該非判定手続の基礎講座

該非判定(貨物編)について

※本講座では、貨物を対象として解説します。

本稿は概要を説明するためのものですので、実際に該非判定※その他、実務を行う際には必ず最新の法令等をご確認下さい。また、輸出管理品目ガイダンスもご参照ください。 
※該非判定:貨物、技術が特定重要貨物等(輸出貿易管理令別表第1の1~15の項の中欄に掲げる貨物及び外国為替令別表の1~15の項の中欄に掲げる技術)に該当するかどうかの判定(又は確認) (輸出者等遵守基準を定める省令による)

1.法令の読み方に関する注意点

安全保障貿易管理に係る「規制貨物」の品目は「輸出貿易管理令別表第1」(以下、別表第1)に規定されています。ここでは、実際に関連法令を読む上での留意点をご紹介します。 法令用語には日常用語と異なる「解釈」等が付される場合があり、それを踏まえて読み解いていかなくてはいけません。

    まず、輸出貿易管理令別表第1 9の項(1)を例にとります。
    例:別表第1 9の項

    次に掲げる貨物であって、経済産業省令で定める仕様のもの
    (1) 伝送通信装置又はその部分品若しくは附属品(15の項の中欄に掲げるものを除く。)
         (中略)
    (11) (7)から(10)までに掲げる貨物の・・・(以下省略)。

     
    ここで、実際、注意すべき箇所に「 」をつけ説明いたします。
    例:別表第1 9の項

    次に掲げる貨物であって、経済産業省令で定める仕様のもの
    (1) 伝送通信装置」「又はその部分品」「若しくは」「附属品15の項の中欄に掲げるものを除く。
         (中略)
    (11)  (7)から(10)までに掲げる貨物の・・・(以下省略)。


    「 」をつけた言葉には、それぞれ意味があります。

    「次に掲げる貨物」
    「次に掲げる貨物」の「次」とは、上記の例では(1)~(11)までに掲げる貨物を指します。 別表第1では規制対象となる貨物の名称が規定されているだけで、規制される貨物の具体的な機能や特性(仕様、数値等)が規定されていません。

    「経済産業省令で定める仕様のもの」
    「経済産業省令」とは、「輸出貿易管理令別表第1及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令」(以下、「貨物等省令」)を指し、別表第1の規制対象となる貨物の具体的な機能や特性(仕様、数値等)が規定されています。これらの機能等に合致するものが規制貨物となります。

    「又は」/「若しくは」
    選択的な関係にある事項を列挙してつなぐ場合に用いられる接続詞です。単一で用いるときや選択される語句に段階がなく、単に並列された語句をつなぐ場合は「又は」を使います。法令上、選択される語句に段階があるときには、大きな選択的連結には「又は」を用い、小さな選択的連結には「若しくは」を用います。

       例:A又はB若しくはC ⇒ A or (B or C)

    今回の例では、「伝送通信装置又はその部分品若しくは附属品」となっており「伝送通信装置」本体と「部分品」「附属品」は、大きな選択的連結の関係にあるので、「又は」を用い、「部分品」「附属品」は、小さな選択的連結の関係にあるので、「若しくは」を用いています。いずれにせよ、規制対象となる「伝送通信装置」の「部分品」「附属品」も規制対象となります。

      例1:○○装置又はこれらの部分品であって、次のいずれかに該当するもの
          →該当する部分品が具体的に規定されている。
      例2:○○装置であって、次のいずれかに該当するもの又はその部分品
          →該当する○○装置の部分品はすべて該当品。ただし、「部分品」に用語の解釈あり。

    「伝送通信装置」「部分品」「附属品」
    別表第1、貨物等省令で使用される用語は「輸出貿易管理令の運用について」(以下、「運用通達」)という通達で用語の解釈が定められています。貨物の該非判定を正しく行うためには、「別表第1」、「貨物等省令」、「運用通達」を必ず確認しなければなりません。

    「(15の項の中欄に掲げるものを除く。)」
    貨物は、必ずしも一つの項番でのみ規定されているとは限らず、複数の項番で規定されている場合があります。ただし、重複の該当を避け、規制の優先順位を明確にするために、「Xの項の中欄に掲げるものを除く。」という文言が入っている場合があります。

    また、「用いられる」や「用いることができるもの」との記述がある場合、いずれも、その貨物の輸出後の具体的用途により判断するのではなく、その貨物がそのような機能や特性を備えているか、そのように使用することができるか、その貨物が持つ機能や特性等により判断することになります。


2.該非判定に関する注意点

  1. (1) 最新の法令等に基づき判定する
    該非判定に関する法令等は、通常レジームの合意内容等を反映し、毎年改正されます。今まで「非該当」であった貨物が、改正により「該当」になる場合もあります。常に輸出時の最新法令等に基づき該非判定をしなければいけません。
  2. (2) 貨物の名称だけで、単純に判定しない
    法令等で規制されている貨物の名称は、必ずしも一般的に使用されている名称と同じとは限りません。例えば、「ベアリング」を該非判定しようとして別表第1を探しても見当たりませんが、6の項(1)に「軸受」という名称にて規制されています。(軸受は4の項(5)でも規制されています。)

       その他の事例
       インバーター → 周波数変換器(2の項)
       水槽・タンク → 貯蔵容器(3の項)
       バルブ    → 弁(3の項)
       IC     → 集積回路(7の項)

  3. (3) 貨物の持つ機能や特性等により判定する
    該非判定を行う場合、貨物の名称ではなく、その機能や特性等が規制されているかどうかを確認しなければいけません。つまり、「その貨物がどういう機能や特性を持つのか」ということが判定項番を選定する上での第一歩となるわけです。 また、貨物の機能や特性等は必ずしも一つとは限られず、複数の機能や特性等を備えている場合があります。例えば、「携帯電話」は、通信装置はもとより、決済機能や暗号機能(暗号装置)、GPS(航法装置)、ワンセグ(暗号装置・伝送通信装置)等の様々な機能を備えています。この場合、それら機能や特性等に関して判定する必要があります。
  4.     例:個人情報や売上などお金に関する情報を扱う装置 → 暗号機能はないのか?
         金属の加工ができる装置               → 工作機械ではないのか?
  5. (4) 複数の項番で規制されていることがある
    我が国の安全保障貿易管理制度は、複数の国際輸出管理レジームでの合意に基づいて実施されています。そのため、貨物が複数のレジームで規制されている場合があり、複数の項番にて規制されていることがあります。

  6.      例:超電導電磁石、超電導材料 → 2(34)、 5(8)、7(5)
         ポンプ              → 2(10)、2(35)、3(2)、4(5)、13(3)
         コンデンサ           → 2(41)、7(7)
         アナログデジタル変換器   → 4(23)、 4(26)、7(1)、7(8) 、8
         集積回路            → 4(23)、4(26)、7 (1)、7(2)、9(7)

  7. (5) 運用通達の解釈も確認した上で判定する
    該非判定を行う際には、別表第1や貨物等省令だけでなく、運用通達の解釈等を確認しなければいけません。 例えば、別表第1や貨物等省令には記載されていないが、運用通達の解釈にのみ記載されている貨物があったりします。
    例:送風機
  8.   別表第1

    2の項(7)

     ウラン若しくはプルトニウムの同位元素の分離用の装置若しくはその附属装置又はこれらの部分品((31)に掲げるものを除く。)
      貨物等省令

    第1条第七号
    ウラン若しくはプルトニウムの同位元素の分離用の装置であって、次のいずれかに該当するもの若しくはその附属装置又はこれらの部分品
     イ ガス拡散法を用いるもの

      ・・・以下省略
      運用通達解釈

    ウラン又はプルトニウムの同位元素の分離用の装置の附属装置
    ウラン又はプルトニウムの同位元素の分離用の装置本体の外側に据え付けられる装置をいい、次のいずれかに該当するものを含む。
     イ 省略
     ロ アルミニウム、ニッケル又は60パーセント以上のニッケルを含有する合金を
       用いて製造した圧縮機又は送風機であって、吐出し量が毎分1.7立方メー
       トル以上のもの

     ハ 省略

     このように、解釈の中にのみ貨物が記載されている場合もありますので、解釈もよく確認しなければなりません。見落としを防ぐには、「輸出令別表第1・外為令別表用語索引集」等を活用するとよいでしょう。

  9. (6) 「部分品」「附属品」等に注意
    貨物本体が別表第1の規制対象である場合、その部分品や附属品も規制されている場合があります(主に規制されるのは、専用設計された部分品等)。また、他の貨物に組み込まれたり、混合されたりする貨物自体が単体として規制されている場合もあります。

    1. ① 規制対象貨物の部分品等が規制されている場合
      本体が別表第1の規制対象である場合、部分品等が規制対象となることがあります。部品等のみを輸出する場合であっても、本体貨物の該非判定結果を確認しなければなりません。
    2. ② 部品等が、単体で規制されている場合
      貨物本体を構成する部品等(例えば、製造装置・機械・プラントに使われているバルブ、ポンプ、貯蔵容器等)が規制対象であることがあります。この場合、貨物本体が非該当のものであったとしても、該当する部品等の輸出許可が必要になることがあります。

3.該非判定書の作成/発行にあたっての注意点

輸出通関申告のために税関や輸出者等取引先より納入/提供等する輸出貨物等の該非判定結果を求められた場合、税関や取引先にその結果を連絡/回答することになります。ここでは、その連絡方法として一般的に用いられている該非判定書を作成/発行する場合の留意点を挙げておきます。

○ 「該非判定書」に関する留意点

  1. (ア)判定対象貨物等が特定できる名称、型式等を明記すること
    該非判定書はパッキングリスト(場合によっては、Supply Listや出荷明細等)に記載される輸出貨物等の該非判定結果を証するものです。よって、判定対象貨物等はパッキングリスト等の記載に基づいて作成するのが基本です。取引先との契約上の貨物等名称と自社内商品等の呼称が異なる場合には、併記等することにより、輸出貨物等との同一性を明確にしておくことが必要です。
  2. (イ)判定の根拠とした法令等を明記すること
      政令及び項番
      省令番号(条・項・号・記号)

      当然のことながら、根拠法令は最新版であることが前提です。政省令等改正後において貨物等の該非判定結果が変更となる等の場合、いつの時点の法令等かも記載しておくことが重要です。(通常は、発行日をもってその時点の最新法令等と解釈する。)
    また、特に、輸出貨物等がリスト規制に該当するものである場合、輸出者等が効率的に許可申請できることを考慮した内容としておく必要があります。

  3. (ウ)判定結果(該当する、該当しない)及び判定根拠を明記すること

      判定根拠については、貨物等省令に定める機能や特性と対比できる情報(輸出者等が自ら該非判定又は確認が可能な情報)を記載します。(必ずしも項目別対比表等を用いる必要はありません。)

  4. (エ)(ウ)の結果、貨物等がリスト規制(1項~15項)に該当せず、16の項に該当する場合、(キャッチオール規制の確認対象貨物等であることを知らしめるため)その旨を明記する。
  5. (オ)本体貨物に組み込まれたり、混合されたりしている貨物(部分品や附属品等、以下組込貨物という)自体がリスト規制に該当していることがありますが、運用通達に定める所謂「10%ルール」等が適用できない場合は、組込貨物の許可申請が必要となるため、その旨を明記することが重要です。尚、許可申請が不要な場合は、特段の記載は必要ありません。

○ 該非判定書の書式について

  1. (カ) 該非判定書の宛先(発行先)を明記すること
    間接輸出における宛先は、輸出者等取引先からの特段の要求がない限り、原則として「取引先」とする。
  2. (キ) 該非判定書を作成又は発行した年月日を明記すること
    政省令等改正前後に該非判定書を発行する場合で、改正後に該非判定結果が変更となる場合には、いつの時点の法令等を適用した結果であるかを記載することが重要です。

○ 該非判定書の発行管理

  1. (ク) 自主管理の対象書類の一部として保管すること


4. 該非判定書の入手にあたっての注意

購入品の該非判定を行う場合、メーカー等からその結果を直接聴取したり、該非判定書等を入手したりした上で、自らその諸元を確認し該非判定を行います。そのためにメーカー等に該非判定書の作成/発行を依頼する場合、次のことに留意する必要があります。

昨今、輸出管理業務の事務負担の軽減が叫ばれている中、該非判定書の授受にあたって、対象貨物等及び対象貨物の組込貨物に対して形式的に項目別対比表等の添付や輸出者独自の指定様式での提供を必須要求したりする等、作成者に過剰な業務負担を強いるケースが見受けられますが、依頼/入手にあたっては上記「3. 該非判定書の作成/発行にあたっての注意」の内容を理解の上対応することが必要です。

尚、CISTECが発行している項目別対比表やパラメータシートは、自ら該非判定を行うための支援ツールであり、法令上、提出を義務付けられているものではありません

  1. (ア) 依頼時、入手目的を明確にすること
    リスト改正時の取扱貨物等の該非データベースの更新や社内工場設備等の調査など、輸出通関以外の目的で該非判定書の作成/発行を依頼する場合には、その目的等を文書等(文例参照)にてメーカー等に説明し、理解を得た上で依頼して下さい。 なお、メーカー等から輸出管理に必要な情報(主に最終需要者、商流、仕向地、用途等キャッチオール関連情報)の提供要請があれば、可能な範囲で連絡する様にして下さい。
  2.  <文例>

      ○ リスト改正時

     本リスト改正に伴い、貴社製品に関する該非判定書の発行を依頼致します。尚、弊社では、当該製品を含む取扱貨物等の該非判定結果を該非データベースに登録し、リスト改正の都度更新等を行い、都度の輸出の際の輸出審査に活用しています。ご理解頂いたうえでご協力をお願い申し上げます。

      ○ 工場設備等の調査

     弊社では、海外工場の技能者等を国内工場に受け入れてトレーニングをします。その場合、弊社規程では、国内工場に設置等されている設備等の該非判定を行っておくことにしております。そこで、貴社既納の製品についての該非判定書の発行を依頼致します。ご理解頂いたうえでご協力をお願い申し上げます。
    ※この場合、該非判定書の発行を依頼しても断られるケースが見受けられます。例えば、アンケート形式で自ら設備名称等を記載した確認書を作成し、メーカーには判定結果のみ記載してもらうようにする等メーカーが応じ易くする工夫も必要です。

     


  3. (イ) 依頼は時間の余裕をもって行うこと
    出荷や通関直前に依頼するのではなく、例えば、引合仕様書や注文書に記載して予め依頼しておくなど、出荷直前に慌てることがないように事前に対応を講じておくことをお勧めします。

  4. (ウ) 該非判定結果のみならず、判定根拠や諸元にて自ら法令等と照らし合わせて確認すること
    項目別対比表等の添付を形式的に必須にしたりすることは控えるようにしましょう。
    また、個々の組込貨物全ての該非判定結果を要求したり、それらに対する項目別対比表の発行を要求したりするケースが見受けられます。該非判定書を作成/発行するメーカー等の業務負担を考慮した対応が必要です。

  5. (エ) 入手した該非判定書が最新の法令等に対応しているか確認すること
    輸出予定時期を考慮した依頼を行うこと。政省令等改正前に入手したものについて、改正において規制内容に変化がないものについては、メーカー等に最新の法令等においても該非判定結果に変更がないかを確認(メールや電話等)する程度でいいでしょう。(但し、その確認結果及び確認相手等を記録しておくこと。)


5. 該非判定の支援のためのツール

該非判定書は、法令等を熟知していれば、自社で作成してもかまいませんが、CISTECが発行している該非判定の支援ツールには次のものがあります。
 ○ 項目別対比表
 ○ パラメータシート
 ○ 輸出管理品目ガイダンス


  1. 項目別対比表
    別表第1とそれに対応する貨物等省令の項番が一覧表になっており、ほぼ全項番の該非判定をすることができます。「解釈」がある語句に関しては、解釈の見落としがないように「伝送通信装置」のように語句に下線が付されています。解釈は、別表第1の各項番の最後に各項番毎に添付されており探しやすくなっています。また、罫線の表示の違いによって「and条件」と「or条件」が区別されています。

  2. パラメータシート
    貨物等省令で規定される仕様や解釈の定義を反映した表やフローチャートとなっており、それに従ってチェックをしていけば、別表第1、貨物等省令、解釈がすべて確認できるよう設計されています。ただし、パラメータシートは、比較的輸出案件の多い、先端材料、エレクトロニクス、コンピュータ、通信などの項番に限られています。

  3. 輸出管理品目ガイダンス
    Q&Aや「解釈」の更に詳しい説明、該非判定を考える上で役に立つ技術的な解説等を収録していますので、該非判定の客観性を保つためにも、該非判定の担当者は、関係のある分野についてはお手元に用意されることをお勧めします。

 ご紹介のように、CISTECでは該非判定に関する様々な支援ツールを作成しておりますので、是非ご活用下さい。