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2017年8月

自主管理で違反が見つかったら、どうする?

CISTEC事務局

 社内監査で無許可輸出をしたなどの明白な外為法違反が見つかったら、まずは経産省の安全保障貿易検査官室(安検室)に報告することが大事です。
経産省の「安全保障貿易管理」のサイトでは、「事後審査(外為法違反について)」の項目の中で、以下の説明があります。
安全保障貿易に関する事後審査手続き
そこでは、安全保障貿易に関する無許可輸出等の審査について、次のように書かれています。

 「違反原因や実際の用途等を考慮した上で、刑事罰行政制裁(3年以下の輸出等の禁止)、経済産業省貿易経済協力局長名による警告(原則企業名公表)経緯書又は報告書の提出(原則企業名非公表)、等の処分・対応が行われることがあります。なお、事案によっては当該企業が保有する包括許可が取り消される場合もあります。」

 ただ、これだけでは、実際のところがよくわからないという声がありますので、CISTEC事務局において説明させていただきます。

1 経産省の考え方
  ―自主管理が機能した結果として見つかって自主申告された違反については基本的には再発防止
    指導に留まる

 「無許可輸出等」といっても千差万別です。該非判定のミスによって無許可輸出になってしまう場合もありますが、悪意を持って無許可で輸出する場合とは全く意味合いが異なります。
 経産省では、自主管理の一環で違反を見つけて自主申告する場合には、基本的には再発防止指導を中心にするというスタンスであり、それによって過大なペナルティが科せられることはないと思われます。
 2011年の秋に当時の安検室長に「今後の事後審査の運用の基本的考え方」についてインタビューした中でも、CP企業には極力自主性に委ねることを前提として、違反事案を自主申告してきた場合には「その事案が貨物等の特性、最終用途・最終需要者等から判断し申請すれば許可がなされたであろう案件かどうか、故意や悪質性があるかどうか(法益侵害の程度が高いかどうか)、法第55条の10の輸出者等遵守基準を守っているかどうか、といった点を踏まえて、処分に差をつけるようにしています。」といって、「現場では試行的にその運用で事後審査を行っています。」と語っていました(CISTECジャーナル No.137 2012.1参照)。
 CISTECのあり方専門委員会・自主管理分科会では、その考え方を明確にしてもらうために、あらためて2013年5月に安検室長以下に対して文書照会を行い、口頭にて回答を得ています。その内容は以下の通りです。

 「経済産業省としては、外為法の無許可輸出等にかかる対応において、法益侵害の程度が低いことを前提として、CPに基づき内部監査等により自ら見つけ、その原因を認識し然るべく対応をしていると認められる案件については、過剰な負担を求めることなく、真に必要な範囲で対応する方針である。」

 このやりとりについては、文書化し、産業界と安検室の双方で共有して、CISTECジャーナル及びCISTECのホームページで公開しており、安検室もこの考え方を踏襲して対処がなされています。下記のCISTECジャーナル2013年7月号の
「自主申告による処分軽減の明確化に関する取り組みについて」記事(別添))
に、このやりとりとともに解説を掲載していますので、ご参照下さい。

2 制裁、指導のパターン
  ―法令に基づく行政制裁/行政指導ベースの措置/包括許可取消 等
  ―関税法上のAEO承認の取消にも波及する可能性

 無許可輸出等の場合の、経産省の対応措置としては、冒頭にご紹介した通り、次のようなものがあります。法に基づく刑事罰、行政制裁と、行政指導ベースによるものがあります。

【外為法に基づくペナルティ】
外為法で刑事罰や行政制裁を科せられる場合は、悪質な事例が対象となり、ミスにより違法輸出等となってしまった場合に、ましてや自主申告してきた場合にはこれらが科せられることは考えにくいところです。

  1. @ 刑事罰
    1. ・ 刑事罰は、警察が捜査の上立件され、裁判所の判決で決定されます。悪質な場合には、経産省が刑事告発する事例もあります。
    2. ・ 最高10年以下の懲役、個人3000万円以下の罰金、又はこれの併科。法人は10億円以下の罰金。罰金は個人、法人のいずれも、輸出価格の5倍以下のスライド制。
    3. ・ 2017年5月の外為法改正により、罰金の水準が全般的に引き上げられ、かつ法人重科も導入され、最高10億円になりました(施行日:10月1日)。概要は、以下の法改正資料をご覧下さい。
      外為法改正案概要 p3
    4. ・時効は最長7年です。
  2. A 行政制裁
    1. ・ 輸出、技術提供等の取引の3年以内の全部又は一部の禁止。 輸出で違反の場合でも、技術提供取引も含めて禁止される場合もあります。
    2. ・ 2017年5月の外為法改正により、行政制裁の内容が強化されています(施行日10月1日)。概要は、上記の「法改正案概要」のp4~5をご参照下さい。
    3. ・ 刑事罰は故意の場合が対象となりますが、行政制裁は過失でも対象となります。
    4. ・ 行政制裁については、時効はありません。実際に、罰則が時効になっていても、行政制裁が科せられた事例があります。また、不起訴になっても、行政制裁が科せられることもあります。

【行政指導ベースの措置】
行政指導ベースの措置としては、以下のような措置があります。

  1. @ 貿易経済協力局長名による警告(原則企業名公表)
    ・企業名が公表されると、その企業の社会的信用が失墜し、ひいてはビジネス上の不利益を被ることが考えられます。
  2. A 経緯書又は報告書の提出(原則企業名非公表)
    1. ・ 経緯書、報告書の主な項目については、経産省の次のサイトに記載されています。
      安全保障貿易に関する事後審査手続き

    2. ・ 過去5年間の輸出等の経緯、違反の原因分析、再発防止策が中心になります。再発防止策については、半年後に実施状況の報告が求められます。

【関連するペナルティ】

  1. @ 包括許可の取消
    1. ・ 規制対象貨物等が通常兵器関連等の比較的機微度が低い場合や、ホワイト国のように懸念が少ない国が仕向地の場合には、個別許可ではなく、包括許可が与えられることが少なくありません。

    2. ・ 無許可輸出等の法違反の内容次第ですが、包括許可付与の前提となる自主管理(外為法等遵守事項)がしっかりできていないと認められる場合には、上記の行政制裁や行政指導等と併せて、包括許可が取り消される可能性があります(「法令若しくは許可の条件に違反したとき・・・本許可が取り消されることがある。」(包括許可要領))。一件ごとの個別許可になると、時間もコストもかかることになりますので、影響が大きいペナルティとなります。

  2. A AEO制度に基づく事業者認定の取消
    1. ・ AEO制度は、貿易のセキュリティの確保と円滑化を両立させるための国際標準に即した認定制度であり、税関が運用しています(AEO制度の解説参照)。 これは関税法に基づく措置ですが、外為法違反の内容によって、法令遵守体制が十分ではないと判断されると、認定が取り消される可能性があります。

    2. ・ 輸出者向けのAEOプログラムとしては、特定輸出申告制度があり、貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された輸出者について、貨物を保税地域に搬入することなく、自社の倉庫等で輸出の許可を受けることが可能となるほか、税関による審査・検査にも反映され、輸出貨物の迅速かつ円滑な船積み(積込み)が可能となるなどのメリットがあります。認定取消に伴い、これらのメリットが失われ、多大なコスト面、手続き面でのデメリットが生じることになり、罰金や行政制裁にも匹敵するペナルティとなる可能性があります。

3 無許可輸出となるパターン
  ―過失から悪質な確信犯まで千差万別。
  ―行政制裁や行政指導ベースのペナルティは、過失でも対象。

  1. @ 「無許可輸出等」となる様々なパターン
    安全保障輸出管理、特に汎用品の無許可輸出というのは、次のように様々な場合があり得ます。具体的態様(故意か過失か、法益侵害の有無・程度、経緯等)によって、ペナルティの在り方は変わってきます。
    1. ・ 該非判定を単純に間違えた。しっかりとしなかった。
    2. ・ 複数項番での判定が必要なのに、一つの項番の判定だけで済ませてしまった。
    3. ・ 輸出令別表第1の1の項は武器品目なので慎重に判定したが、2の項以下の汎用品の判定をしなかった、又はおろそかにした。
    4. ・ 輸出規制の存在を知らなかった。
    5. ・ 条文が複雑で、解釈を誤った、又は見逃した。
    6. ・ 個別許可が必要なのに包括許可で出してしまった。
    7. ・ 許可例外(許可不要の場合)の適用を誤った。
    8. ・ 貨物の許可だけでいいと思って、その貨物の扱いに係る役務取引許可を取らなかった。
    9. ・ 納期に間に合わないので、少額特例を使って輸出した。
    10. ・ 面倒なので許可手続きをとらずに無許可輸出した。
    11. ・ 手続きを怠って輸出したものが、テロに使われた。
    12. ・ 輸出先と共謀して敢えて無許可輸出した。
    13. ・ 大量破壊兵器の開発・製造のために政府の許可が発給されないと考え無許可輸出した。 等等
    14. ※これ以外に、安全保障輸出管理関係ではない、通常の輸出管理対象品目を定める「輸出令別表第2」の規制を認識していなかった、忘却してしまった、等の事例もあります(化学品関係)。
  2. A ペナルティの実例

      CISTECのHPには、過去の外為法違反事例を掲載しています。
    刑事罰と行政制裁とを、公表資料からわかる範囲で掲載しています。

4 CISTECの該非判定、体制構築等の関連支援サービス
  ―再発防止のためにも活用いただけます。

@ eラーニング(無料)
A 該非判定支援サービス―「該非判定検証証明書」を発行いたします。
B 監査・体制整備支援サービス
C 講師派遣サービス
D 実務能力認定試験(Associate(初級)/Advanced(中級)/Expert(上級))

 

以上

別添
「自主申告による処分軽減の明確化に関する取り組みについて」
(CISTECジャーナル 2013.7 NO。146)