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第28回 日本安全保障貿易学会 研究大会終了

 

 

 第28回日本安全保障貿易学会研究大会は、約65名の参加者を得て2019年9月15日(日)に拓殖大学にて開催された。午前の自由論題セッションは応募がなかったため、午後のテーマセッションのみで開催された。

 テーマセッションでは2件のテーマをとりあげた。第1セッションでは、「外交手段としての安全保障貿易管理」として3名より報告があった。
 まず、小野純子氏より、「エコノミックステートクラフトとしての米国輸出管理」と題し、米国の輸出管理に着目したエコノミックステートクラフト(Economic Statecraft 、ES:経済的な手段を使って国家的な目的を達成するという行為)に関し報告があった。米国は1950年代のCOCOM時代よりESを適用しており、その歴史を解説した。ESにはネガティブ(禁輸等)/ポジティブ(最恵国待遇等)の種類があるが、2000年以降は主に中国に対しネガティブな運用のみとなった。ESは当初イベントドリブン的性格であったが、最近では国家の大戦略達成のための手段となりつつある、と結んだ。
 次に佐藤丙午氏から、「政策手段としての安全保障貿易管理−日韓のホワイト国解除問題に見る可能性とリスク−」のテーマで報告があった。Economic Statecraft は秩序の強化、政策を誘導、懲罰的制裁等多くの目的があるが、そのため、目的が不透明になりやすい。その観点で今回の日韓問題を目的と手段の均衡(当該手段によって政策変更が促されるか)、手段の強度の適切性、政策変更の重要性などが問われるとした。
 また、川瀬剛志氏から「対韓国輸出管理強化とWTO協定」と題し、対韓国の輸出管理強化を安全保障の面ではなく、国際通商の面での分析があった。韓国はWTOに対し紛争解決を申し立てた。WTOはGATT協定に基づき判断を行うが、GATT21条「安全保障のための例外」が主な争点となる。今回の管理強化が「安全保障上の重大な利益」の保護に必要と認められるかなど難しい面があるとの解説であった。また、GATT21条は1947年の古い条文であり、現時点の適正な安保貿易管理を十分カバーできていないなど、予断を許さない、との報告があった。

 第2セッションでは「データ管理と移転規制」として2名の報告があった。
最初に新保史生氏より「データ移転をめぐる国内外における制度的枠組みの構図」と題し、個人情報の保護に関し解説があった。日本−米国−EUの個人データの移転をめぐる国際的な制度の概要、相関関係の解説後、日本のデータ移転、個人情報保護に関する法規制の紹介があった。また、EUの一般データ保護規則(GDPR)の取組の紹介があった。GDPRは、包括的な取り組み、個人の権利保障、域内の活性化、グローバル化への対応を目的にしており、日本もこれに適合しているとされている。
 最後に福永哲郎氏より「DFFT(Data Free Flow with Trust)の背景と今後の展望」と題し、G20においてDFFT(信頼に基づくデータフリーフロー)を20か国合意の閣僚声明として盛り込んだ経緯について説明があった。DFFTは経済成長・包摂的成長につながるが、人々・企業間の信頼が必要であり、そのため、各国の法制度は相互運用性を確保することが必要である。現在、第4次産業革命は第2幕の「サイバー+リアル結合を巡る競争」を迎え、AIによる産業・社会のニーズが高まってきた。一方、国によって異なる移転の制度に対し、デジタル経済の拡大の対応したルール整備・個人情報保護に向け、日本が主導的立場をとらなければならない、との方針説明があった。

  今回は、テーマセッションで「外交手段としての安全保障貿易管理」、及び、「データ管理と移転規制」の二つのテーマをとりあげた。それぞれ現時点で最も関心の高いテーマであり、多くの側面からの分析が報告された。フロアからも活発な質問・意見が出され有益な研究大会であった。

2019年11月
日本安全保障貿易学会 会長 鈴木 一人

 

 

鈴木会長 挨拶

会場風景

会場風景

日本安全保障貿易学会 第28回 研究大会プログラム

日時:2019年9月15日(日)
   (12:30〜12:50 第15回 総会)
   13:00〜15:00 第1セッション
   15:10〜17:00 第2セッション
会場:拓殖大学(東京/文京区)
   国際教育会館 F館301教室
   東京都文京区大塚1-7-1


テーマセッション

● 第1セッション:<外交手段としての安全保障貿易管理> 13:00〜15:00
  (1)報告者:小野 純子氏(CISTEC)
        「エコノミックステートクラフトとしての米国輸出管理」(資料添付省略)
  (2)報告者:佐藤 丙午氏(拓殖大学)
        「政策手段としての安全保障貿易管理−日韓のホワイト国解除問題に見る可能性とリスク−」
  (3)報告者:川瀬 剛志氏(上智大学)
        「対韓国輸出管理強化とWTO協定」
  司会討論者:鈴木 一人氏(北海道大学:JAIST会長)

● 第2セッション:<データ管理と移転規制> 15:20〜17:00
  (1)報告者:新保 史生氏(慶應義塾大学)
        「データ移転をめぐる国内外における制度的枠組みの構図」
  (1) 報告者:福永 哲郎氏(経済産業省)
        「DFFT(Data Free Flow with Trust)の背景と今後の展望」(資料添付省略)
  司会討論者:香山 弘文氏(経済産業省:JAIST理事)



第1セッション:「外交手段としての安全保障貿易管理」
左より 小野純子氏、佐藤丙午氏、川瀬剛志氏



司会:鈴木一人氏

 

第第2セッション:「データ管理と移転規制」
左より福永哲郎氏、新保史生氏



司会:香山弘文氏