XC Export Controls First Defense

行事の案内


第19回 日本安全保障貿易学会研究大会終了

 

 第19回日本安全保障貿易学会研究大会は、46名の参加者を得て2015年3月14日(土)に同志社大学で開催された。今回は自由論題セッションの応募は無かったため、午後の2つのテーマセッションで開催された。

 第1セッションでは、「3Dプリンタの現状と将来」を取り上げた。3Dプリンタはここ数年急速な発展を見せているが、ハード面、ソフト面の最新動向、及び輸出規制の面からの討議を行った。
 京極氏よりハード面から見た技術動向の報告があり、産業用の三次元積層構造技術(AM技術)の変遷、最新の金属3Dプリンタの動向の説明の後、我が国の新たなものづくり産業の創出のための国家プロジェクトとして技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)の紹介があった。更に今後の課題として高精度・高速化、マルチマテリアル製造可能な装置開発、各種合金のAM用紛体開発の提示があり、将来のSmart Factoryの重要な加工ツールの位置付けとすべきとの報告があった。
 一方、鈴木氏より3Dプリンタと関係の深い技術として、X線CTによるリバースエンジニアリングについて、報告があった。製品の設計製造段階において、リバースエンジニアリングは現物を計測してCADモデルにフィードバックする手法として活用されているが、その具体的な手段としてのX線CT装置について紹介があった。光学的手段とは異なり、X線CT装置は現物の表面形状だけでなく内部の形状等も含めて計測できる点が大きな特徴。製品例や3次元形状生成技術等について、様々な例を挙げて解説頂いた。また、X線CT装置から得られた3次元データを用いた3Dプリンティングの例についても紹介があった。
 次に井上氏から輸出管理における規制に関し報告があった。日本では汎用工作機械に3Dプリンタが組み込まれるなど応用が広がっているが、汎用金属加工機として3Dプリンタは規制されていない。専用加工機としてはAM技術を応用したガスタービンエンジンブレード製造機器の規制が昨年12月にWAで追加されたものの、当面汎用の3Dプリンタが規制される気配はなく、工作機械等との規制のバランスの観点からの検討が望まれる旨報告があった。

 第2セッションは「中東情勢について−ISILをキーワードにして」と題し、ISILの台頭でにわかに話題となった最近の中東情勢に関して討議を行った。
 上村氏からはご自身の長年の経験を活かし、非常にわかりやすい解説がなされた。現在の中東・北アフリカでは宗教、忠誠意識、アイデンティティが複雑に絡みあい、危ういバランスで構成されている。部族がベースにあり、国への所属意識、その上に民族主義(トルコ主義、アラブ民族主義、ペルシャ主義)があり、全体をイスラム共同体(ウンマ)として統括されている構成になっている。従い、民族としては反目していても、イスラム共同体としては協調するなど、単一民族の日本としては理解が難しい面があるものの、これらの事情を理解しなければならない旨の報告がなされた。
 一方、高岡氏からはイスラーム国(ISIL)の発生、伸長の原因の分析・考察の報告があった。発生要因としてはイラク・シリアなどの政治・経済的不平不満、出入国・資金提供の容易さ、ISILの資金調達を許す法制度、ISILを正当化する大義名分や理想の生活の宣伝、これを扇動する拡散者の存在などがある旨、先行研究の一端を紹介しながらの考察があった。更に、ISILの活動を促進するような各国の政治状況があること(例:アラブの春を経験した諸国)、また、ISILの活動を許す各国の対応の課題がある旨報告があった。

 二つのテーマセッションでは、それぞれ現時点でもっともホットなテーマであり、産官学のそれぞれの側面からの分析が報告され、フロアからも活発な質問・意見が出され有益な研究大会であった。

2015年3月
日本安全保障貿易学会 会長 佐藤 丙午



佐藤会長 挨拶


会場風景

日本安全保障貿易学会 第19回 研究大会プログラム

日時:2015年3月14日(土)

   13:00〜17:00 第1セッション、第2セッション

会場:同志社大学(京都府)
    室町キャンパス 寒梅館 211 号室  (寒梅館 KMB211 教室)
    京都市上京区烏丸通上立売下ル御所八幡町103

第19回研究大会

第1セッション:<3Dプリンタの現状と将来>  13:00〜14:50

 報告者
 @ 近畿大学 次世代基盤技術研究所3D造形技術研究センター長 京極 秀樹氏
   近畿大学工学部・学部長、工学部ロボティクス学科・教授
   報告タイトル:「3Dプリンタの技術動向」
 A 東京大学 工学部 精密工学科 教授 鈴木 宏正 氏
   報告タイトル:「X線CTによるリバースエンジニアリングと3Dプリンティング」
 B CISTEC 調査研究部 主任研究員 井上 道也氏
   報告タイトル:「安全保障貿易管理の面から見た3Dプリンタの現状」

    司会 :日本機械輸出組合 橋本 弘二氏
    討論者:CISTEC 新留 二郎氏

第2セッション:<中東情勢について−ISILをキーワードにして> 15:00〜17:00

 @ 外務省 中東アフリカ局長 上村 司氏
   報告タイトル:「最近の中東情勢について」
 A 中東調査会 上席研究員 高岡 豊氏
   報告タイトル:「「イスラーム国」の発生と伸張についての考察」

    司会 :同志社大学 村山 裕三氏
    討論者:三井物産 高野 順一氏



第1セッション:「3Dプリンタの現状と将来」
左より  橋本 弘二氏、新留 二郎氏、京極 秀樹氏、鈴木 宏正氏、井上 道也氏



第2セッション:「中東情勢について−ISILをキーワードにして」
左より  高野 順一氏、村山 裕三氏、上村 司氏、高岡 豊氏、